【取材メモ】ともいきの国伊勢忍者キングダム訪問記
2026年2月20日、僕は仕事で三重県伊勢市にある、共生バンク(みんなで大家さん)が「シリーズ伊勢」としてファンドを販売していたテーマパーク「ともいきの国伊勢忍者キングダム」を訪れた。三重県ではいくつかの仕事があって2月16日から4泊5日で訪れており、その仕事は自分自身の調査もあれば、外注の仕事もあったが、「忍者キングダム」の仕事は後者だった。ただし仕事としてはそれほど優先順位は高くなく、時間があればお願いしますという程度で、ある物について園内で所在を確認し撮影してくれれば良い、他の話は僕自身の動画で使うものを優先してください、という話だった。
忍者キングダムは昨年6月にREIWAリゾートの取材で三重県を訪問中、フォロワーさんより存在を教えられて一度立ち寄ったことがあったが、その時はすでに閉館間際の時間で入場できず、翌日以降に改めて訪問する時間も確保できず、以後再訪することもなくそのままになっていた。
今のように「みんなで大家さん」問題が大きく騒がれていれば、日程を延長してでも入場していたと思うが、その時はまだみんなで大家さんの出資者への分配金支払いも遅れておらず、すでにシリーズ成田(ゲートウェイ成田)の工事の進捗状況について強い疑念の声は上がっていたものの、まだマスメディアで大きく報道される状況ではなかった。
2025年6月訪問時の写真。閉園間際で入場は叶わなかった。
もともと僕は不動産小口化商品についてはまったくの専門外で、自身での投資経験もなければ披露できるほどの知識もなく、共生バンクに特化した独自調査は行っていない。みんなで大家さんの名前くらいは以前から耳にしたことはあったが、シリーズ成田の疑惑についても、楽待や日経不動産マーケット情報などで報道されている以上の話はなにも知らなかった。しかしREIWAリゾートについて、特に南伊勢町で調査を進めていくと、否が応でも共生バンクの話は出てくるので、いつの間にか僕もこの問題を意識せざるを得なくなった。
ところが、みんなで大家さんの分配金停止、償還遅延の問題に関する報道の大半は、巨額の出資金を集めたゲートウェイ成田の話で占められており、「シリーズ伊勢」の注目度は低い。2017年より募集が開始されたシリーズ伊勢においても、第6弾以降のファンドは成田同様に分配の停止や運用期間の延長が発生しているにもかかわらず、関連報道で名前が挙がる機会も少ない。
やっているのかも疑わしいバナナ栽培や、重機が空回りしていただけの成田と異なり、伊勢は一応資金集めの名目となったテーマパークは実在し今も稼働している点では通常の不動産小口化商品と変わらず、成田ほどの報道インパクトはなく話題性に欠けるためであろう。
そんなわけで、伊勢取材の一環として「忍者キングダム」を訪れることになったわけだが、僕は元々テーマパークで遊ぶ趣味というものがなく、「忍者キングダム」が、以前は日光江戸村と同じ系列の「伊勢戦国時代村」という名称であったことも知らなかった。
入場券だけ購入し、言われたものを撮影するだけのつもりだったので、事前情報もなく口コミなども何も確認せず向かったのだが、9:30頃に現地に着いてみると、駐車場は、隅に寄せられた従業員のものらしき車両以外は一台の駐車車両ももなく、僕と、運転手として同行した僕の友人の2人だけの貸切状態であった。
「ともいきの国伊勢忍者キングダム」の入場門。
入場ゲート近くには1台の駐車車両もなかった。
帰宅後にこの話をXでしたところ何故か大きな反響があり、バス会社の大新東が運営していた戦国時代村の頃から常に閑古鳥が鳴いていたという話を知らされた。奇妙な話だが、この閑散ぶりは今に始まった話でもないらしい。いずれにせよ大新東が赤字で運営する分には、道楽だろうと税金対策だろうとどうでもいい話だが、現在の運営は共生バンクグループである。出資者への分配金の支払いが停止している状況で、赤字上等の道楽まがいの放漫運営など許されるはずもない。
スタッフに罪はないけれど、悪いけどもうこんなのは閉めて、運営資金も弁済に回したほうがいいんじゃないの そんな簡単な話でもないだろうけども
入口には「安土城下の湯は2025年7月より閉館しております」と書かれた注意書きがある。チケット購入時には、忍者キングダムの目玉施設である、安土城を復元した建物は改装中で外観しか見られないと説明があった。以前来たときは入浴施設はまだ営業中だったが、ちょうどシリーズ成田の分配が止まって大きく騒ぎになった時期と前後して閉館したらしい。閉館の理由も書かれていない。
目玉施設である「安土城下の湯」は、分配金の支払いが停止したタイミングで閉館。
園内はBGMや、アトラクションの演出の音声などが響き渡っているが、広大な敷地内に誰一人歩いておらず寒々しい光景が広がっている。入り口から入ってまず目に入る「たべあるき処」は雨戸で閉ざされ、隣の「変身写真館」には定休日の張り紙がある。忍者キングダム自体が水曜定休なのに、なぜか中の施設は単独で別の定休日を設定している。稼働中のアトラクションもあるにはあるのだが、園内に立ち並ぶ建物のおよそ3分の2は未稼働、あるいはもともと何のために存在しているのかわからないものばかりであった。
「通行手形」と呼ばれる、アトラクション利用無制限の1日券は4900円だが、レストランを併設した温泉施設も休業、たべあるき処も休業、その他3分の2の建物が放置状態のこのテーマパークで1日過ごすのは難しい。僕らは元々招かれざる客なのだからいいとしても、これでは子連れの純粋な客はとても満足できるものではないだろう。
何故か施設とは別に独自の定休日を設ける「舶来変身写し処」
スタッフは、いくつかのアトラクションで待機している若いスタッフがいる他は、営業中の2軒の土産物店にそれぞれ店番が各一人、山頂付近にある安土城へ向かう送迎バスの運転手が一人、入口のチケット売りの女性が一人、園内を掃除している女性が一人がいて、僕が見かけた範囲ではスタッフの数は合計で8名であった。誇張ではなく本当に客よりスタッフの方が多い。入場したはよいけれどこれといってやることがないので、早速目玉である安土城を見に行こうと思い、送迎バスの乗り場へ向かうことにした。
「定休日」「改装中」「不在」などの理由で閉ざされている施設が多い。
乗り場で待機するバスの車体には、忍者の衣装を着た女の子が大きなバナナを手にする写真がペイントされている。その下には「ともいきバナナ」とあり、共生バンクのロゴも描かれている。「奇跡のバナナ」を投資商品とする共生バンクが、この施設でバナナを強くアピールするのは今に始まった話ではないが、それを体験型テーマパークにストレートに持ち込む姿勢はまったく理解できない。
「ともいきの国」という施設名もそうだが、共生バンクの事業を知らなければ「ともいき」も「バナナ」もまったく意味不明で、忍者と何が関係あるのか理解できないだろう。この点を見ても、共生バンク代表の栁瀨は自我や自己顕示欲、自己満足の自制ができない人物というのがよくわかる。
「ともいきバナナ」の宣伝ラッピングが施された送迎バス。「17時から入場無料!」の文字が消されている。
バス待合所。
バスの出発時刻まで数分あったが、寒いので車内で待機して良いか運転手に聞いてみると「誰も乗らないけど一応発車時刻が決まっているので少し車内でお待ちください」との回答だった。ずいぶん投げやりな姿勢だが、連日、1人も乗らない客を定時で運行している無力感があるのだろうか。
バス運転手の立場で考えれば、お客は一人でも多く乗らないに越したことはないという感覚は僕にもわかるのだが、連日ただ時刻に合わせて無人のバスを転がして往復しているだけというのは、それはそれで少々辛いものがある気もする。
ちなみに運転手曰く、ここの安土城は、4年前に外壁を塗り直しているが、中は34年前の新築時から手を加えられておらずそのままになっていてかなり傷んでいるはず、とのことだった。別に聞いてもいないのにスタッフ自ら入場客にそんな話を暴露するのもすごいが、この時僕も友人も2人揃って作業着姿だったため、客には見えなかったのかもしれない。
この安土城は、まだ共生バンクが買収した当初に天守をホテルの客室として開業する計画があり、当時はメディアを利用したプロモーションも行っていたはずだが、それが今もまったく改装されいないというのはどうしたことだろうか。いずれにせよ安土城は現在は「改装中」であり外観の見学しかできない。
閉鎖中の安土城。外壁だけは塗り替えられているが、中は34年前から変わらずそのままだという。
そんな安土城の脇に、朽ち果てた屋外劇場のようなものがある。案内図にも何も書かれておらず、観客席も腐り果てて雑木まで生えている有様なので、相当長い期間使用していない模様だが、その中に、バナナの栽培を行っていたらしき温室の残骸が残されている。もちろんすでに荒れ果てていて今は何も製造していないが、同じ三重県内にあったバナナの製造拠点の温室と構造はまったく同じである。
明らかに外部の目に触れさせるものではないのに特に立ち入り禁止の表示もないのが不思議だが、訪れる者もいないのでその表示も必要ないのだろうか。この忍者キングダムで自社製造のバナナやバナナスムージーを販売していることは以前から盛んに宣伝していたが、園内でバナナを製造していたという話は聞いていない。
バナナの栽培所らしき温室。特に立ち入り禁止の表記などはなかった。
ボロボロに朽ち果てた観客席。
再びバスに乗って安土城を離れて「一層」に戻ったが、戻ったところでやはりやることはなく、見どころはせいぜい2軒営業中の土産物店くらいしかない。園内の所々に、盆栽やサボテン、苗木が無造作に放置されているが、よく見ると値札が付いているのでどうやらこれらも本来は売り物らしい。中には一人で持ち上げるのが難しそうな巨大なものもあるが、テーマパークの中でこんなものを買って帰る客などいたのだろうか。
ちなみに忍者キングダムの園内の庭園は、著名な庭園デザイナーであるという石原和幸氏が手掛けているとのことだが、その石原和幸氏の功績をたたえる記念館のようなものも設置されていて、ほとんどの施設が閉鎖されている中、なぜかその記念館だけはきれいに整えられて絶賛公開中であった。「ともいき」もそうだが、この施設はどうも関係者の自我を抑えきれていないのが気に掛かる点である。
腐った園芸コーナー。値札が付いているところを見ると、どうも一応売り物らしい。
15万円の盆栽坪庭。価格はともかく、こんなものを園内で買って持ち帰るのだろうか。
石原和幸記念館。忍者とまったく関係なくどうでもいい。
園内の施設の大半が閉ざされているのに、なぜかここは今もきれいに整えられて公開中。
その後もしばらく園内を散策してみたが、レストランもやってないし寒いしで、お土産を買ったらもう何もやることがない。元々遊びに来たわけではなく、一応依頼されていたものの撮影も終わったので退場しようとしたところ、上品な印象を受ける老夫婦がパンフレット片手に入れ違いで入場してきた。
僕らは先にも述べたように作業着姿のおっさん二人組で、まともにテーマパークを楽しむ意思などないことは一目瞭然だが、この老夫婦はどう見ても「忍者村」や「安土城」に期待して訪れた一般の観光客にしか見えない。1日券を購入していないことを願うしかない。
それにしても別に僕は閑散ぶりを期待していたわけではなく、そもそもこれほどまで寂れているという予備知識もないまま訪れたのだが、さすがにこれでは満足できる一般客が多くいるとも思えない。受付の女性に少し話を聞かずにはいられなかったのだが、詰問口調になったら事実陳列罪、いやカスタマーハラスメントになってしまうので「これは別に文句を言うつもりじゃなくて興味本位で聞くのですが、ここはいつもこの感じなのですか」となるべく穏やかに聞いてみたところ、女性は少し気まずそうな顔になって「春休みはもう少し来ると思いますが、今は…」と回答した。
確かにまあ、2月の平日で客の大入りを求めるのも酷な話だが、それにしたって0人はさすがに度を越している。何よりここは一般のテーマパークではなく、冒頭でも述べたように、「みんなで大家さん」が運営会社(実態は同一の会社だが)から得られる施設の賃料収入を出資者へ分配する投資商品なのである。
それが、数名のスタッフを雇用して、わずか数人程度の入場料しか得られないというのであれば、計算するまでもなくその分配構造は破綻している。みんなで大家さんで販売されたファンドのうち、大阪の宗右衛門町のモータープール跡はすでに国税の滞納によって差押が行われている。伊勢忍者キングダムも時間の問題ではないだろうか。
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