キングアンバサダーホテル熊谷

埼玉県熊谷市にある、共生バンクのホテルに泊まってきたので感想を
吉川祐介 2026.11.04
誰でも

※参考資料として当初掲載していた登記簿の画像が、別の土地のものでしたので差し替え済みです。また、47号は第23回の分配金の支払日が、支払い遅延が発生した2025年7月31日であり、遅延が発生しておりましたので記事も訂正済みです。大変失礼いたしました。

埼玉県の秩父で撮影の予定があったので、ついでに熊谷市の「キングアンバサダーホテル熊谷」に宿泊してきた。

キングアンバサダーホテル熊谷は、2007年より「みんなで大家さん」のファンドの対象物件として、複数回にわたって組み入れられてきた商品だが、最後に販売された「シリーズ47号」は、第23回の分配日が、分配金の支払い停止が発生した2025年7月31日となっており、償還の遅延が発生している。(事実誤認があったため太箇所訂正済み)

2013年に東京都主税局、2015年に千葉県の個人から差押、仮差押の申し立てが行われている記録がある。このころの「みんなで大家さん」は、2012年と2013年に2度にわたって営業停止処分を受け、投資家からの解約申請が相次いでいた。一部のファンドでは償還が延期されていたようなので、おそらく税金滞納のほか、償還の遅延によって投資家から訴えられたのだろう。

キングアンバサダーホテル熊谷。

キングアンバサダーホテル熊谷。

ホテルの入口。広めの客室が多いので、建物の規模の割に客室数は少ない。

ホテルの入口。広めの客室が多いので、建物の規模の割に客室数は少ない。

その後も、同ホテルを対象とするファンドが何度か販売され、ホテルの営業も続けられてきた。表向きは普通のホテルであり、更地なのに分配金が出現する「ゲートウェイ成田」のような奇怪さもないため、運営会社の素性を気にする宿泊客はあまりいないと思うが、一連の分配金・償還停止の騒動のさなか、同ホテルも2026年6月5日に関東在住の個人からの差押えで強制競売開始決定、同年7月には熊谷市から差押え、さらに翌8月に大阪市から差押えを受けるなど、もはや待ったなしの状況にある。

キングアンバサダーホテル熊谷の竣工は1992年。Xのフォロワーさんの情報によれば、完成後しばらく建物が放置されていた時期があり、建築当初から曰く付きのホテルとして知られていたらしい。現在の登記事項証明書には、2001年時点で英領ケイマン諸島の法人が所有権を取得して以降の履歴しか記載されていないが、2004年に熊谷市内の法人が購入し、翌2005年に、西五反田の「株式会社福利厚生課」なる謎の法人が購入している。都市綜研インベストファンドは、2007年にその株式会社福利厚生課から同ホテルを購入しており、数年の間に所有者が何度も入れ替わっていたことが確認できる。

キングアンバサダーホテル熊谷の建物登記。令和8年6月以降、差押が繰り返されている。

キングアンバサダーホテル熊谷の建物登記。令和8年6月以降、差押が繰り返されている。

前所有者は「株式会社福利厚生課」。

前所有者は「株式会社福利厚生課」。

ホテルは、バブル崩壊直後とは言えまだバブル時代の香りが色濃く残る豪奢な造りで、結婚式場が併設されている。ロビーも広くゆったりした造りだが、機械式駐車場は故障しているのか、使用されず放置されていた。

11月3日、祝日の夜ということもあって、宿泊料金は5040円だった。ホテルの規模や立地、客室の設備を考えれば破格の宿泊料金と言えるが、低価格帯のビジネスホテルとして運営するには無駄に広い客室が多く、それ以外の客層を狙うにはリノベーションがまったく行き届いていない印象である。決して不衛生なわけではないのだが、廊下のカーペットはいたるところにシミが見られ、ホテルの外壁も薄汚れて見えるし、エントランスの真横で朽ちている機械式駐車場もすこぶる見栄えが悪い。大規模なリニューアル工事は施さず、買収した当時のまま運営を続けているのだろう。

フロントは2階。

フロントは2階。

結婚式用の貸衣装。

結婚式用の貸衣装。

2階に上るエスカレーター。騒音と振動が大きい。

2階に上るエスカレーター。騒音と振動が大きい。

2階ロビー。時代を感じる豪奢な造りだ。

2階ロビー。時代を感じる豪奢な造りだ。

管内の廊下。

管内の廊下。

管内の清掃は行き届いているが、廊下のカーペットはシミが目立つ。

管内の清掃は行き届いているが、廊下のカーペットはシミが目立つ。

1Fエントランス横の機械式駐車場。現在は使用されていない。

1Fエントランス横の機械式駐車場。現在は使用されていない。

僕自身は元々ホテルの質にこだわる方でなく、どこへ行っても安いホテルしか利用しないので、5040円でこの設備であれば何の不服もない。しかしこのホテルは、いったいどんな客層をターゲットにしているのだろう。元々はそれなりのグレードのホテルであったことは設備や外観から想像がつくものの、さすがに今から高級ホテルとして売り出すにはあまりに老朽化が進んでいるし、大規模リニューアルを行うにしても、郊外都市である熊谷の駅前で、それほど巨額の資金を投じた高級ホテルの需要があるかどうかも微妙である 。

何の経営努力も見られないとまでは言わないが、共生バンクの物件は、少なくとも僕がこれまで見てきたものは、どれも買収時に最低限の化粧直しを施すだけで、結局のところ高級路線で行きたいのか、それとも低価格路線に切り替えたいのか、コンセプトがよくわからなくなっているところばかりだ。

客室は清潔で、最安値の部屋でもゆったりした広さで、5040円の宿泊料金は破格と言える。

客室は清潔で、最安値の部屋でもゆったりした広さで、5040円の宿泊料金は破格と言える。

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「みんなで大家さん」の、すでに満期を迎えているファンドを見ていつも思うのは、その後の「ゲートウェイ成田」や「伊勢忍者キングダム」のような危ない案件に手を出して火傷することもなく、しっかり年利7%の分配金を手にして満期を迎え、逃げ切った投資家もいるんだろうな、ということだ。

もちろん、一度甘い汁を吸ってしまったがゆえに、ノーガードのまま成田の案件に突っ込んで行ってしまった投資家もいるとは思う。一方で、決して多数派ではないかもしれないが、すんでのところで命拾いした投資家、あるいは、怪しいとわかっていながら、それを逆手にとって運用していた投資家もいたのだろう。その命運を分けたのはただ一つ、ほかならぬ投資家自身の判断である。

僕は現在、一応この「みんなで大家さん」の問題を非力ながら追いかけているので、一連の事件を「自己責任論」では片づけたくない。確かに投資は自己責任なのかもしれないが、それにしても共生バンクグループの事業は何もかもがあまりにずさんで、こんな会社のきわめていかがわしいファンドが、あたかも真っ当な「投資商品」であるかのように平然と販売されていたこと自体、そもそもおかしな話だからだ。

しかし、まだ造成工事の段階で「賃料収入」が発生していたゲートウェイ成田など論外レベルの話だし、すでに休業した伊勢忍者キングダムも、誰が見ても悲惨な集客状況で、テーマパークとして成り立つはずもなかった。皮ごと食べられるという触れ込みの「奇跡のバナナ」も、食べる前に皮を洗う手間が増えるだけの話で、わざわざ皮ごと食べたいとも思わないし、1本1000円という値段のどこに勝機があるのかわからない。

バナナはまだしも、成田と伊勢に関しては、大金を注ぎ込む前に現地をひと目でも見ていれば、両者ともまるで投資商品の水準に達していないことなどすぐにわかったはずなのだ。とりわけ成田の破滅的なまでの矛盾点は、分配金が停止する前からずっと指摘されていたことでもある。こんな荒唐無稽で、まるで儲かる気がしない「投資商品」による被害を、自己防衛以外のどんな手段で防げというのか。それを考えると、結局はやはり「投資は自己責任」という結論に至らざるを得ないのかと、暗澹たる気分にさせられるのである。

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