君ヶ浜荘園分譲地

先日、「君ヶ浜分譲地案内」なるパンフレットをYahoo!オークションで入手した。君ヶ浜とは、千葉県銚子市の景勝地・犬吠埼の北側に広がる弓状の浜の名称で、銚子電気鉄道にも同名の駅がある。僕は一年ほど前から、君ヶ浜駅よりひとつ銚子寄りの駅、海鹿島駅周辺で大正時代に行われていた別荘地分譲事業について調べており、その資料収集の過程で見つけたものだ。発行年は記載されていないが、そのデザインや文面から、戦前期の発行物であることは間違いない。
出品物は件のパンフレットのほか、同時期に発行されたと思われる、銚子市観光協会発行の観光パンフレット、昭和8年3月の銚子鉄道の時刻表、そして「昭和9年7月21日」の日付の記入のある、銚子鉄道株式会社の社名が印刷された封筒がセットになっていた。

ヤフオクで入手した戦前の銚子のパンフレット。
オークションの開始価格は12000円。普通の感性であれば秒で却下するお値段だが、君ヶ浜の別荘地などというものはそれまで全く未知の存在で、隣の海鹿島の別荘地を調べている僕にとっては見過ごせる代物ではない。
海鹿島における別荘開発の歴史を調べている過程でも、君ヶ浜で別荘地開発が行われていたなどという記録は一切目にすることがなかった。また、現在の君ヶ浜の海岸付近一帯はほぼ雑木林であり、その多くが国有林のはずである。海鹿島は、まだ道路の形状や区画割などに別荘地時代の名残が見られるが、君ヶ浜の雑木林は、かつて別荘地として利用されていた痕跡も見られない。
落札後、出品者の方に商品の出所について訪ねてみたところ、これは茨城県石岡市で今も営業を続ける老舗酒蔵の先々代社長の蒐集品であったという。考古学への造詣が深く、多くの文人とも交流があったその先々代社長は、包装紙でも何でも蒐集する癖があり、古物商界隈では有名な人物らしい。その蒐集物が、今日になって刷り物市場に放出されたものを、出品者が入荷してYahoo!オークションに出品したそうだ。