「君ヶ浜荘園分譲地」の陸屋根別荘

先日公開した動画についての情報提供
吉川祐介 2026.10.17
誰でも

先日、YouTubeで公開した『謎の「君ヶ浜荘園分譲地」』の動画を見た視聴者さんより、動画内で触れている「L字型の陸屋根の別荘」について、曽祖父が銚子で所有していた別荘に酷似している、とのご連絡をいただいた。

別荘の所有者である阿部護(ゆずる)氏は、当時、東急の下請建築業者として田園調布の造成工事などにも携わっていた阿部組を経営しており、その絡みで、銚子君ヶ浜の荘園分譲地にも何らかの形でかかわったのではないかと視聴者さんは推察している。

視聴者さんからは、写真と、阿部護氏の経歴についての公開もご快諾いただいたが、今となっては関係者全員が故人であり、古い写真が残されているだけで、別荘の詳細も、最終的に別荘がいつ処分されたのかもわからなくなっているという。記憶を辿れば、視聴者さんは生前の祖母より、都内から船で銚子に入った話を聞いたことがあったそうだ。

君ヶ浜荘園分譲地のパンフレットに掲載されている「工事中ノ写真」と見比べても、同一の建物と判断して間違いない。写真の右下には「舞子通三丁目 十✕✕(判読不能)」とあり、これもパンフレット記載の平面図と1947年撮影の航空写真とを照らし合わせた建物の所在地と同一である。

パンフレットの写真は不鮮明だが、こちらの写真は白黒ながら鮮明な画質で、半円の庇や角の取れた窓、曲線を描いた階段など贅沢な造りで、建築業者である阿部護氏のこだわりが感じられる。このモダン別荘が、なぜパンフレットでは「建築工事事務所」とされていたのか。もしかするとこの荘園分譲地は、阿部組が造成工事を請け負っていたのかもしれない。

視聴者の方から送られてきた阿部護氏の別荘。右下に「舞子通三丁目 十✕✕」の記載がある。行儀よく並ぶ犬がかわいい。

視聴者の方から送られてきた阿部護氏の別荘。右下に「舞子通三丁目 十✕✕」の記載がある。行儀よく並ぶ犬がかわいい。

パンフレットに掲載されている「工事中ノ住宅」

パンフレットに掲載されている「工事中ノ住宅」

写真裏側。「犬吠埼別荘前の阿部一家 昭和七年」

写真裏側。「犬吠埼別荘前の阿部一家 昭和七年」

ちなみに閉鎖登記簿を確認しても、この建物がある土地も他の区画同様、戦後の昭和22年まで特に動きはなく、その後相続人によって売却された経緯も他区画と同様である。ただし、この建物があった筆に関しては、売却後、新所有者が金融機関より借入を行った際に抵当権が設定されており、その際に何らかの建物が共同担保となり、その旨が乙区に記録されている。

しかし乙区には家屋の所在地も、家屋番号の記載もなく、ただ登記番号の「建物登記第七弐号」と記載されているだけで、その共同担保の建物がこの白い陸屋根の別荘であるかは、乙区の情報だけではわからない。親番である銚子市君ヶ浜8853番には複数の建物登記があり、そのすべてを取得しなければ別荘のものを特定できず、今回はそれ以上の追跡を断念していた。

別荘の写真が残されていたことだけでも驚嘆に値するが、その子孫の方が、こうして動画を視聴していただいた偶然には本当に驚かざるを得ない。あの君ヶ浜の動画は、「荘園」という名称についての考察も適当であり、先に公開していた海鹿島別荘地の動画と対比させるためにややふざけた構成にしてしまったのだが、これほど鮮明な写真と記録が寄せられるのがわかっていれば(わかるはずもないが)、もう少し丁寧な構成にすべきだったと今さら悔やんでいる。

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