放棄分譲地と占有

昨日、動画素材の撮影のために千葉県香取市のとある分譲地を訪ねてきた。その分譲地自体は動画の主題ではなく、あくまで動画内の参考映像のひとつとして使用するつもりだったので、事前に登記やストリートビューなどの確認もしていなかった。
もう8年も前の話になるが、まだ「限界ニュータウン探訪記」のブログを開設して間もない2018年3月16日、僕はブログを通じてご連絡を頂いた一人のフォロワーさんとこの分譲地を訪問したことがあった。その頃は、まだ今のように新聞縮刷版などを念入りに検討することもなく、訪問先の選定はほとんどがアットホームや草刈り業者の物件情報が頼りで、この香取市の分譲地も、日栄不動産の広告を参考に訪ねたものだったと思う。
当時の僕はまだバス会社勤務であり、家探しの最中だったので、人が一人も住んでいないような放棄分譲地にはそれほどの関心がなく、それは同行していたフォロワーさんも同じだった。そのため、2戸の空き家(廃屋)があるほかはすべてが雑草、雑木に埋もれ、ほとんど利用されている形跡もないこの香取の放棄分譲地にはさしたる関心も払わず、少しだけ見てそのまま別の分譲地へ出向いてしまった。

2018年3月16日に訪問した香取市某所の放棄分譲地。廃屋があるだけで、どの区画も一切使用されていなかった。

分譲地内の藪に埋もれていた廃屋。(2018年3月16日撮影)
それからだいぶ後になって、昭和48年2月3日付の読売新聞に掲載されていたこの分譲地の広告を偶然見つけた。分譲地名は「飛鶴苑高級分譲地」。成田空港からおよそ18kmも離れ、周囲に鉄道駅はおろか、民家もほとんどない田園地帯にもかかわらず「誕生間近い成田国際空港 躍動する成田周辺…」「今がチャンスだ! あなたも地主に!」などと言った無責任なコピーが踊る典型的な投機型分譲地の広告である。
面白いといえば面白いのだが、しかし「成田」を謳った投機分譲地はこれまでもさんざん扱ってきたため、改めてこの放棄分譲地を扱ったところで同じ話の繰り返しになってしまう。そのためせっかく広告を見つけたものの、ついでの用事がまったくない地域ということもあり、長く再訪もしていなかった。そして今回、成田空港近くの別の分譲地を題材に動画を作ることになり、当時の典型的な投機分譲地の一例として紹介するため、8年ぶりに撮影に向かったというわけである。

「飛鶴苑」の新聞広告。典型的な投機型分譲地の宣伝手法である。(昭和48年2月3日付読売新聞)